SSブログ

雨上がり

さっきまで嵐のように降り続けていた雨が、今はピタリと止んで

まるで夏の太陽のような明るい輝きが、濡れた森の木々たちを覆いつくしている。

俺達はその煌きに引かれるように、湖への道を散策した。

 

大きな木が生い茂るこの森も

今は沢山の木漏れ日に美しく照らされている。

湖を渡ってくる風は、雨上がりの濡れた匂いを俺達の元に運んで来た。

 

森を抜け、湖の桟橋へ辿り着こうとしたその時、

2~3粒の大きな水滴が、頭上から降り注いで来た。

それは、俺のこめかみを伝い、頬を濡らし、唇まで侵食した。

 

「槐・・・じっとしてて」

 

俺が拭うよりも早く、類子の唇が俺の唇からその水滴を掠め取っていった。

そして、俺の唇を濡らした水滴は

悪戯な微笑を浮かべる類子の唇を濡らしている。

降り注ぐ午後の太陽が、類子の唇をキラキラと輝かせた。

 

美しい彼女の姿と、湖を渡る雨上がりの清々しい風

 

俺は、神さまから、思いがけない贈り物を貰ったと

ふと笑顔がこぼれる・・・

そんな幸せな午後だった。

 

 


家路|- ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。