雨上がり
さっきまで嵐のように降り続けていた雨が、今はピタリと止んで
まるで夏の太陽のような明るい輝きが、濡れた森の木々たちを覆いつくしている。
俺達はその煌きに引かれるように、湖への道を散策した。
大きな木が生い茂るこの森も
今は沢山の木漏れ日に美しく照らされている。
湖を渡ってくる風は、雨上がりの濡れた匂いを俺達の元に運んで来た。
森を抜け、湖の桟橋へ辿り着こうとしたその時、
2~3粒の大きな水滴が、頭上から降り注いで来た。
それは、俺のこめかみを伝い、頬を濡らし、唇まで侵食した。
「槐・・・じっとしてて」
俺が拭うよりも早く、類子の唇が俺の唇からその水滴を掠め取っていった。
そして、俺の唇を濡らした水滴は
悪戯な微笑を浮かべる類子の唇を濡らしている。
降り注ぐ午後の太陽が、類子の唇をキラキラと輝かせた。
美しい彼女の姿と、湖を渡る雨上がりの清々しい風
俺は、神さまから、思いがけない贈り物を貰ったと
ふと笑顔がこぼれる・・・
そんな幸せな午後だった。
2007-05-19 16:55