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微熱

頭がフラフラしている・・・

俺が熱を出すことなど滅多にない。

一体、今日の俺はどうしたというんだ?

だが、微熱はまるで酒に酔った気分のようだ。

そう・・・  それも甘い酒に。

口に入れた瞬間、滑らかで濃厚な舌触りと

鼻をくすぐる甘い香りが

まるで頭の奥底を痺れさすように刺激しながら喉を潤してゆく

あの甘い酒に酔った感覚。

夏の夜の海を漂うような

浮いたり沈んだりのフワフワした感覚と軽い痺れが

俺の神経を麻痺させ

蝶が美しい花の香りに吸い寄せられる様に

心地よい夢の中へと俺を誘惑する・・・

 

ふと、額に触れる冷たい感触に目覚めた。

いつの間に、俺は眠っていたのだろう?

ゆっくりまぶたを開くと

そこには俺を覗き込む、美しい二つの黒い宝石。

『類子・・・』

心配そうな表情で覗き込む類子の頬に、熱い手を延ばすと

『かぁい・・・』

俺のその手をとらえ、両手で包み込む類子の冷たい手。

その心地良さに酔うように、俺はしばらく瞳を閉じた。

『槐?』

優しく問いかけるような、類子の声を聞きながら

また俺は

海を漂う様なユラユラした感覚に身を任せ、瞳を閉じたまま

類子の髪にそっと手を延ばす。

『類子・・・ 愛してる・・・』

そのまま触れた彼女の唇は、微熱に犯された俺の熱い唇を

いつまでも

いつまでも

心地よく

冷ましていった。

 


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